尾山奈々 著 「花を飾ってくださるのなら 奈々十五歳の遺書」 講談社
書誌情報
- 【 ISBN 】4-06-202325-3
- 【 書名 】花を飾ってくださるのなら 奈々十五歳の遺書
- 【 著者 】尾山奈々 著 保坂展人 編
- 【 刊行年月 】1986年
- 【 概要 】263p 19cm
- 【 価格 】1000円
- 【 発行/発売 】講談社
本の概要
- 1984年冬に自殺した女子中学生の文章を教育ジャーナリストの保坂展人さんがまとめたもの
在庫状況
-
東京都中央区立日本橋図書館にあります。
都立中央図書館にあります。
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本の内容
著者略歴
以下引用。表紙より
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尾山奈々
昭和44年尾山進、尾山邦子の次女として長野県安曇郡池田町に生まれる。小さいときから植物に興味を示し、草花の名前を驚くほどよく知っている少女だった。安曇郡松川村立小学校から同中学校に入り、放送委員の副委員長、合唱部の副部長、英語クラブの委員長などをつとめる。
感受性の強い、本質を見抜く鋭い個性をもち、図書館から年間200冊も本を借りだして読む読書家でもあり、勉強もよくできた。だがそれがためいじめの的にもなり、「まじめなのがバカみたいに思えてきて」自分を低く評価するようにしたり、ひょうきんにふるまったりもした。
大きく開花しようとする能力と個性が、学校や教師、受験体制のなかでぶつかり合い、苦しみ悩んだ末、学校に対する抗議の文書を残して自殺するに至った。
奈々さんの残した生活記録は中学校1年生から3年生までの雑感文だが、「奈々さんの文章には、ふっと読み飛ばしそうなフレーズの中に、びっくりするほどの深みをついた文章がひそんでいる」(編者)。
本書は、この一人の少女の死を賭けた批判と悲劇が今日のあらゆる学校に共通するものであるという認識のもとに、特にご両親のご厚意を得て整理したものである。
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引用終わり。
奈々さんの遺書全文
以下引用。9ページ から 13ページ
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残された遺書1
3年C組のみなさんへ
期末テストはどうでしたか。まあ私は期末テストを受けなくてすんだのですが、別にテストがいやだからこうしたわけではありません。勉強についてはほとんど悩みをもっていない人でした。成績低下という事実もありましたが、本当に勉強をしていない私にはそれは理由にならなかったのです。高校受験についても「どこでもいい」という安易な考え方でした。とにかく勉強のことではありません。
ところで、私がしたことについて、「どんなことがあってもそうしてはいけない」「それは現実から逃避している。つらいことがあっても逃げてはいけない」といった意見がでると思いますが、それはきっとそうなのでしょう。そういった人達は幸せです。希望ももっていることでしょう。そのような人が私はうらやましい、しかし、私もいつかはそうだったのです。そのような考え方の人は私のような不幸な考え方にならないで下さい。
しかし、私の最後のお願いですが、直接の原因だけを勝手に推測して、自分の考え方のみで「たいしたことないのに」と判断を下すのだけはやめて下さい。感じ方、考え方は人によって違うのです。私はたとえようがない程、苦しく、悲しかったのです。
ところで、このような時期に動揺させてしまって、非常に申し訳ありません。しばらく授業にくる先生が人生についてとか、道徳的なことを言うかもしれません。まあ、私はえらそうなことをいう先生がとてもきらいでしたが。
先生といえば、私の有様を見て、A教諭が「ざまあみろ」とか思ったりしたら、くやしいです。いや、あの教師だったら、生徒の前で口に出して言うかもしれません。まったく心残りだ。
わき道にそれましたが、本当にすみません。これを言いたくてこの手紙を書いたのでした。
上ばきについている茶色の物質はココアなので安心して焼却して下さい。生活記録には多少他人の文がまじっています。私の文はほとんどあほらしいのですが、たまに真意が書いてあると思います。たぶんわかりにくいので、考え込んで下さい。机の中にありますが、ゴミ箱行きはきらいだそうです。ハデだし。
ぞうきん、出さなくてすみませんでした。毛糸はぞうきんに向かなかったようです。数学係は早苗さん一人では大変なので決めておいてください。掲示係はほとんど仕事をしなかったので、いいと思います。選択がついに4人になりましたが冬をのりきってください。
もし、花を飾って下さるのなら、あの席はだめです。
クラス全員を暖めなければならないストーブの熱で、しおれてしまうかもしれません。
それでは、みなさん、さようなら。
おわり。
松川中学校 3年C組 34番 尾山奈々より。
残された遺書2
今日は期末テストですが、このたびの私の行動には、全然関係ありません。短絡的思考の方、残念でした。
ときたま今日実行してしまっただけです。
11月の少し前から考えていたから、1か月以上も考えていたことになりますが、ひきとめてくれる事物もありました。しかし、ご丁寧にも背中を押してくださるものもあって、決意を固くすることができました。率先して押して下さったのは学校です。だれにも計画は話していませんでしたが。
私が生死を安易に考えていると思うかもしれませんが、惰性で生きているのはいやなのです。人が考える不幸は、私にとって幸福に思えたのです。毎日が冷たく悲しかった。
もうすぐ苦しみから解放されるということだけが楽しみでした。
原因はそうだと思われる場所でさがして下さい。推測による原因は、すべてではありません。しかし、限られた言葉では真意を書き表わせません。直接的なものは、きっかけでしかありません。
『17歳の遺書』もよみましたが、あの本には別に、影響されていません。
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引用終わり。
制作 : RISA-1972